3月に初めてお会いした女性の経営者の方から久しぶりに連絡があり、「iPhoneのこと教えて」というお話だったので今日喜んでお伺いしてきた。
一度しかお会いしたことはなかったが、とても元気で明るい印象の方だった。
私が車で到着すると、玄関先でその女性経営者の方は頭にスカーフを巻き掃除をされていた。
「お久しぶりです」
そう言うその経営者は心なしか元気がなさそうで、以前感じていた印象とはちょっと変わっていた気がした。
どうされたのかな? とは思ったが、気のせいだと思い、つい「お元気でしたか〜?」と言葉を返してしまった。
「いやーちょっといっとき体調を崩してですねー。」
…………あ。
「髪もなくなっちゃいまいた。」
…と、明るく返すその経営者。
この数ヶ月の間に癌になり、抗がん剤と戦っていたのだ…。
このほんの数ヶ月会わない間に。
今は仕事も自分では回せなくなったので、旦那様にほとんどおまかせしているとのこと。
そんな中、僕を呼んでくださったのだ。
…ただ、僕はなんて言葉をかけたらいいのかわからなかった。
昨年まで、そういった命に関わる仕事をしていたはずなのに、何も気の利いた言葉も出てこなかった。
仕方がないので、とにかく iPhone のことをたくさん説明した。
使い方とか設定とかオススメアプリとか……こんなことが出来るよという話……。
僕にはそれしかできなかった。
この iPhone がその方の人生の楽しいページをたくさん作っていってくれたらいいなと願うことしか出来なかった。
僕は逃げるようにその玄関を出てきたかもしれない。